ピアノ教室を変えるという事

9年間師事していたピアノの先生のもとを去った。
数年前から違和感があり、どうしようか、やめようかと思っていたのだったが、やめるとなるとやはり相当なエネルギーを要したのか、昨日は発熱して寝込んでしまった。

ピアノを再開して今年で11年になる。
私は受験のときに、家の事情で音大へは行けなかったため一般大学へ進学し、30代後半までピアノとはほとんど関わりのない仕事をしていたのだが、ちょっとした病気をしたときに、夫から「ピアノを再開してみては?」と言われて18年ぶりに再開したのだった。
RolandのF-120という機種の、安価ながら使い勝手の良い電子ピアノを購入し、最初は独学で弾いていたが、やはりどこかに入門して学びたいと思い、ピアノ教室を探した。
当初は、家からほど近い場所にある、初老の女性が運営する教室へ通っていたのだが、曲を仕上げさせてくれない(3週間ほどで「飽きたわ~~」と言って終わってしまう)ので、1年半ほどでやめることとした。

そして出会ったのが、A先生だった。
厳しくも、音楽に対し真摯で、誠実な指導をしてくださる方だった。
最初の2年くらいは、何も違和感なく通っていたと思う。
しばらくすると、ピアノとは関係がない私の私生活や家族、ついには友人や過去に師事した先生に対する悪口を言い始めるようになった。
悪口の内容は、容姿、収入、仕事の内容、学歴、家の格など多岐にわたった。
とくに、私があるアプリを作っているという話になった時に、

「そんなもの作ってどうするの?五流の仕事だよ、くだらない」

と言われたことは印象深い。

そんな時に、ある出来事がきっかけで、子供のころ進学まで師事していたB先生に再開した。
B先生は親と同年代で、私の家庭環境がとても悪かったころ、我が子のように家に招き入れ、ピアノを弾かせてくれたり、ときには数日滞在させてくれたりもしたのだ。
日常的に母親から激しい体罰を受けていた私にとって、B先生に会える日は、ピアノの指導を受けられると同時に、安全が担保されている日でもあった。
私にとって、B先生は母親と同じかそれ以上の存在だった。

何度かやり取りを重ね、B先生から、今地元でイベントを主催しているので良ければ出てみないか?とお声がけいただいた。
A先生に相談したら、快く了承してくださり、イベントに向けて熱心に指導してくださった。
イベントへの参加は3年ほど続いた。

ところが今月、来年のイベントについてB先生に予定を伝えると
「そんなもの出る必要はない」
と態度を一変させた。続けて
「意味がないことをいつまで続けるの?そのイベントに出る目的は何?」
「B先生と私と両方にいい顔して失礼にもほどがある」
とまくし立てられた。
良く話を聞くと、どうやらA先生は、私がひそかにB先生から指導を受けていて、いずれB先生のもとへ門下替え(教室を変えること)すると思っているようだった。

このとき私は、「そんなつもりはないのに」と思いつつも、何か言い返すと状況が悪化すると思い、ただひとこと「申し訳ありません」と言うしかなかった。
A先生は畳みかけるように
「B先生はどちらの大学出てらっしゃって、どういう経歴の方なの?」
と私に質問した。
B先生は、有名私立音大のピアノ科を卒業後渡仏、フランスの音大で指導者ライセンスを取得して首席で卒業、フランスで数年後進を指導。演奏者としての活動はないが、現在でも日仏英の3ヶ国で指導者として活動しています。
私がそう答えると、A先生は嘲笑うように言い放った。

「へえ、ショボすぎ。そんな大学出て、フランス行ったからって田舎のイベント主催してイキってるの?ダサいね」

言葉にならなかったが、ひどく動揺したことを覚えている。
これは侮辱だ。なぜ自分を育ててくれたB先生をここまで侮辱されないといけないのか?

私は怒りがかなり遅れてやってくるタイプなので、その場では動揺したのだけれど、普通にふるまってレッスンを受けた。
この侮辱に対する憤りを実感したのは昨日の午前中のことだ。
体調を悪くして寝ている間だったが、夫にB先生からのこれまでの悪口、侮辱を打ち明けた。
「なんでもっと早く言わなかったの?俺はもうあの人に会わない。頭おかしいわ」
というのが夫の感想だった。
こうなると話は早い。
A先生を責める文脈にはしなかったが、私は「過去の指導者として」B先生にも敬意を持っている事、門下替えの意図がなかったにせよ誤解させてしまったことは申し訳なく思っている事、双方において問題が深刻で信頼関係を改善することはもはや難しいことを書き、教室を去ることを伝えた。
A先生からは「突然すぎて驚きました」と返信が来た。

突然ではないのですよ、あなたが9年間積み上げた不信感の結果です。

クラシックピアノをオーソドックスなプロセスで学んでいる人は分かるだろうが、「門下替え」というイベントは一生に何度も発生しないし、発生してはいけない。
ひとりの先生から長く教えていただくことで、文脈のある音楽と歴史が演奏を作り上げるからだ。
大人になると、生徒の人格が完全に独立しているため、ピアノ講師も長く続くレッスンをするというのは難しいのかな、と思う。
特に私とA先生は年齢も近く、師弟関係から一歩踏み込んだ親しさもあったため、行き過ぎた干渉に至ってしまったのかなと感じた。
とはいえ、家族や仕事に対する誹謗中傷は、どのような関係でもあってはいけないと思うし、レッスン費用を支払って何故そんなことを言われないといけないのか?という疑問がいつしかずっと心にあった。

かくして私は、9年間師事した先生のもとを去り、今週さっそく、体験レッスンを受講しに行くことにしている。
先生が変わっても、練習を続けて、曲を仕上げる、というプロセスは何も変わらない。
良い人に巡り合えることを願う。

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