猫の肥満細胞腫治療の記録①

我が家には2匹の猫がいる。
今年10歳になるオス猫の「むぎ」と、今年3歳になる同じくオス猫の「まや」だ。
むぎは、2016年の夏に、おそらくだが母猫とはぐれ、家の前で鳴いていたところを保護してそのまま飼う事にした。
まやは、2023年の3月に先代の猫を亡くし、ペットロスを埋めるように保護ボランティアさんから譲渡していただいて飼い始めた猫だ。

むぎが、「肥満細胞腫」という癌を発症した。
肥満細胞腫とは、免疫に関係する「肥満細胞」という細胞が癌化して起こる病気で、大きく「皮膚型」と「内臓型」の二種類に分かれる。
猫の肥満細胞腫では、皮膚型の場合は頭部に単発で発生することが多く、外科的治療で根治することがほとんどだが、内臓型の場合は遠隔転移を起こして予後不良となる場合が多い。
(参考:みんなのどうぶつ病気大百科
病気の詳細については、いろいろな動物病院で情報を発信しているので参考にされたい。

むぎは4年前に皮膚型の肥満細胞腫にかかり、当時住んでいた地域のかかりつけで外科手術で一度は根治していた。
今回を「再発」と取るか「他の部位での新たな発生」と取るかは分からないが、とにかく二度目の発症で、内臓型で多発性、遠隔転移がある悪性度の高いがんだった。

私は獣医師ではないので医学的な知見を書くことはできないし、病気と言うのは人も動物も同じ疾患でありながら多様な経緯をたどるので治療やケアの正解もさまざまだが、むぎの経緯と治療、家で行ったケア、そして主な医療費について複数記事にわたって共有するので、肥満細胞腫にかかってしまった飼い主さんがここにたどり着いたら、少しでも参考になればと思う。

腫瘍の発見

右耳の裏に、1mm程度の硬い小さなしこりがふたつあったが、当初はそれが腫瘍だとは思わなかった。
4年前に切除した腫瘍は12mmほどあり、大きさがあまりに違うので「まやに噛まれた傷跡かな?」程度の感覚しかなかったのだ。
ふたつの腫瘍が、ちょうど猫の牙の間隔と同じくらいの距離で発生していたこともあり、噛み傷だと思っていた。
2025年12月、スケーリングで口腔ケアをしようと思ってかかりつけの病院へ行った。
獣医師にスケーリングの相談をしているときに「そういえば」と思い、「同居猫からの噛み傷がこことここに残っていて、しこりになっているからこれも全身麻酔のときに除去できませんか?」と尋ねたのだった。
獣医師が患部を触り「あれ?」と言い「これは噛み傷じゃないです」と言った。
「これ皮膚腫瘍ですね。中身が何であれ外科的にとることはできますが、念のため細胞診しますか?」と言われ、このときはじめて、過去の既往を思い出した。
肥満細胞腫かも、過去にかかりましたと伝え、細胞診を依頼した。
多くの病院で、細胞診は獣医師がその場でしてくれることが多く、むぎの場合も20分ほどで、穿刺で採取した皮膚腫瘍の組織が肥満細胞腫と分かったのだった。

この日は私たちも獣医師も単発型の腫瘍だと思っていたので、スケーリングの時に同時に切除しましょう、という話になり、年明けにスケーリングの日程を設定して終わったのだった。

多発と転移の発見

2026年年明けすぐのスケーリング当日、朝一番でむぎを病院へあずけ、そのまま処置中は私は外出していた。
外出先で病院から電話を受け、夕方だったので処置が無事に終わった報告かと思っていたら、電話口で思ってもいない内容の話があった。
要約すると

  • スケーリングは中止になった
  • 皮膚腫瘍の下に、35~37mm程度の巨大な皮下腫瘍が認められた
  • 皮下腫瘍が大きく、やわらかく歪なので、一見ただの脂肪層のように感じるかも知れない、これはおうちでは見つけられない
  • 皮下腫瘍が顔の近くだったため、刺激によりヒスタミンが放出されると命に係わるためスケーリングを中止した
  • 毛刈りをしたら、当初確認していた以外に、狭い範囲で1mm未満の約10個の皮膚腫瘍が認められた
  • 多発的な場合は脾臓へ転移している可能性が高いため、獣医師の判断で脾臓穿刺による細胞診を行った
  • 細胞診の結果、脾臓にも肥満細胞腫の所見が認められた
  • すぐに病院へ来てほしい

というものだった。
口腔ケアをちゃんとしよう、という軽い気持ちで預けたのになぜ?という気持ちで病院へ向かい、獣医師から上記の説明を再度受け、手術や所見については

  • 皮下腫瘍は顔の周りなので切除すると後遺症がでる可能性がある
  • 転移している脾臓は摘出の必要がある
  • 外耳炎の症状があったのでスコープで耳の中を確認したところ、耳の中にも肥満細胞腫を疑う皮膚腫瘍が多数認められた
  • 緊急度が高いため、すぐに治療計画を立てて手術をした方が良い

と言われた。
そして獣医師は

「この手術はおそらく難易度が高く、僕の経験や技術ではむぎちゃんのQOLを維持することが難しいかも知れません。高度医療を行っている地域の医療センターで、チーム医療を受けることを強くお勧めします」

と言った。
これは「逃げ」ではないのだ。命を預かる獣医療の現場で、自分を過信することなく、利益を度外視して他院へ患者を託すことは、獣医師の誠実さであり責任感の強さだと思う。
こうして、手術までの対症療法はこのかかりつけで行い、手術に関する検査や手術、その後の対応は高度医療センターに任せることになった。

高度医療センター

幸い、高度医療センターは家から車でほどない距離にあり、かかりつけからの紹介の翌日すぐに初診を受けることができた。
複数の腫瘍専門医がいる病院だ。
かかりつけが渡してくれた検査データをもってむぎを連れていくと、担当医は「すぐに手術しないと危ないね」と言った。
「かかりつけさんからのデータだと、皮下腫瘍の大きさと脾臓転移までは分かるけど、他の部位にどれくらい転移しているか、皮下腫瘍の浸潤がどこまでなのかが分からないからCTを取りましょう。白血球中に肥満細胞が出てないので、骨髄転移はなさそうだけど…」
と言われ、その場で手術の日程を決めた。
さらに翌週、CTでの画像診断を行った。画像診断は、診断専門医にデータを転送するが、待つ間の時間を無駄にしたくないからと担当医による診断も並行して行われた。

  • 胸骨リンパ節に、心臓の1/6程度の大きさの転移
  • 心臓と肺に近接している部位なので、この転移に外科のアプローチは不可
  • 肝臓や他の消化器には、腫瘍化している転移は画像からは認められない
  • でも腫瘍化する前のがん細胞が存在する可能性は充分にあるので、転移の有無の確定は細胞診が必要
  • 肝臓の細胞診は手術中に行い、消化器は「がん細胞があるもの」として治療を進めましょう
  • 皮下腫瘍は浸潤が深いが、この位置なら後遺症なく切除することが可能
  • 皮下腫瘍の周りのリンパ節が大きく腫れているので、この辺もまとめて取りましょう
  • 肥満細胞腫は、遺伝子の変異により有効な抗がん剤や悪性度が分かるので、「c-kit」という遺伝子検査を行いましょう

という説明を受けた。
画像診断医からの結果もおおむね同様で、この翌週に手術日を迎えた。

むぎはこの間消化器症状が顕著に出ていて、下痢と嘔吐が続いていた。
抗ヒスタミン剤も、下痢止めも効かない。
手術日までの約1ヶ月で、体重は700g落ちてしまっていた。
おそらくだが、肥満細胞腫がヒスタミン剤を放出する「脱顆粒」を起こして激しい胃腸障害が起きていたのと、がんによる悪液質が始まっていたのだ。

手術当日や、その後の対応については後続の記事に記載します。

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