腱鞘炎治療日記(1)

続くかどうか分からないが一応ナンバリングして記事に残しておく。
昨日、整形外科の「手外科」という診療科を受診した。
レッスン時に先生には、このあと整形外科へ行くことを伝え、

「病院へ行って今より悪くなることはないから、原因がはっきりして治療方法が分かると良いですね!」

と言っていただけた。
A先生とはえらい違いだ

病院の最寄り駅に思ったより早く着いてしまい、誇張でもなんでもなく周辺に何もなかったので早々に病院へ入って受付を済ませ、待合室で順番を待っていた。

昨日は何か事件か事故があったらしく、急患対応で警察官も出入りしていて院内がかなりざわざわとしていた。
私は16:30に予約していたのだが、最初の問診に呼ばれたのが17:30のことだった。

「今日急患対応があり、お時間が予約から大幅に遅れてしまい大変申し訳ありませんでした」

と開口一番医師から謝罪されたが、病院にかかる人の症状は千差万別だから予約時間が厳密にならないことはままあることだし、警官の出入りを見れば、今日がイレギュラーだったということは分かる。
きっとこういうことで怒る人もいるんだろうな、と病院という施設の苦労を思う。

いつから何がきっかけで手を傷め、今どういう状況か、どこを「完治」とするかの打ち合わせをした。
打ち合わせ後はレントゲン。
「おそらく関節の問題ではないでしょうが」と前置きがあり、左手の角度を変えて3枚写真を撮った。
その後、やはり関節には問題がないことを確認し、エコーで親指の付け根を中心に炎症を診る。
果たして、素人の私にも分かるくらい、親指の腱が腫れていた。

「腱鞘炎ですね。触診した感じ、ばね指とまではいかないです」

5年前の怪我がそのままになっているのだろうという所見だった。
当時私がかかった整形外科では、レントゲンも撮らず、もちろんMRIやエコーもせず、痛みの愁訴だけで消炎剤を処方されたのだった。
それを聞いた医師はとても驚き「リハビリもなしですか?本当に?記憶違いでは?」と私に念押ししたのだが、私が整形外科でリハビリを受けたのは寝違えて首をひどく傷めたときの一度だけなので、この怪我では本当に消炎剤を塗るだけで終わったのだ。

「治療には時間がかかりますか?」

と医師に尋ねると、「はい、これは時間がかかりますね」と即答された。
8月にピアノの本番があること、遅くとも10月までには、右手と同じ程度に動くように治したいこと、それが叶うなら手術を希望することを伝えた。
これまでの5年間は…と思うと、途中言葉に詰まることもあった。
医師は少し、言葉を選んでいたように思う。

「楽器を弾く人は…そうですね、手術前後の変化にとても敏感です」
「傷口が少しひきつれるとか、熱感があるとか、楽器を弾かない人と比べると本当にわずかな違いに気付いてしまうんですね。これは悪いことではないのですが」
「その違和感が、いつまで続くかというのは平均値のエビデンスもないし、まさに個人差というしかないんです。2年以上続く人もいます」
「違和感があって、怪我をしていたときよりもっと楽器が弾きづらくなってしまったと感じる人も、残念ながらいらっしゃいます」
「なので僕は、楽器を弾く人には手術をおすすめしていません。最終的にはあなたの判断にはなりますが、ステロイドで消炎を試みながら、リハビリで治療にあたりませんか?」
「もちろん時間はかかりますが、使用するステロイドは腱鞘炎に有意に作用するという実績も豊富で、副作用も少なく、効果も早くから実感できるものです」

少し、思っていた回答と違った。
手術をしたいと言えばしてくれるのだと思っていたのだ。
でも、ひとつひとつ、確かにその通りだった。
ささくれひとつが気になって練習に集中できないほど指の変化に敏感なのに、ましてや私はとても神経質なのに、手術のひきつれをずっと感じて練習して、果たして「今より良い」練習になるだろうか?
違和感がいつまで続くか分からないのは、腱鞘炎を治した代わりに別の困りごとを抱えてしまうわけで、それは本末転倒なのだった。
何より、このとき思い出したが、私は「ケロイド体質」なのである。
10年前に腹腔鏡を挿入した臍は未だに赤黒く腫れてときどき化膿するし、背中の粉瘤を切除した痕も、ぶよぶよと黒く少しひきつれている。
この体質では、むしろどんな手術も回避する治療をした方がよさそうだな…と気が変わっていった。

わかりました、ではステロイドをお願いします、というと、医師は手早くアンプルを用意して、左手の親指の付け根に注射した。
エコーで患部を見ながら直接注射するのだ。
薬液が注入されると、腱の周囲がぷっくり膨らんでいくのが分かり、少し怖かった。

そうして治療が終わり、すぐに会計となり、リハビリの予約もできた。

ここまでが昨日の話で、今日は早速、手の痛みがないどころか、昼間にピアノを弾いてみたら、親指が不随意に持ち上がるという事がなくなったのだ。
5年も矯正し続けて直らなかったのに、たった注射1回で?と驚き、久々に、少し思うとおりに動くようになった左手に感激してしまった。

考えてみたら、A先生はピアノの指導者だが医者ではないので、手を傷めたことを相談するのではなく、治療を開始してから医師の指示を伝えるべきだったし、画像も撮らない病院に対して疑問を持たなかったのは私の失敗だった。
とにかく、5年経ってようやく「少し自由に動く手」を手に入れ練習が一層楽しくなった。

今年からは「手を怪我していて」という言い訳をせずに、自分の実力と向き合ってピアノを楽しみたいと思う。

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